ぼろり。

趣味日記。

涼しげでいられない。

車を降りてから扉に至るまでの時間はごくわずか。
それでも屋敷からの薄い冷気が誘い込むように感じられる。
日中気温は34度、夕方になった今も湿度が高く不快極まりない。

こんな日は安っぽい「せっけんの香り」の香りを思い出す。
額に前髪を貼りつけた男は一枚だけ着たTシャツも煩わしいとばかりに両袖を捲り上げている。かろうじて穿いている学生ズボンだけでは勉学をする身なりには見えない。

着込んだスーツに汗の一つも浮かないが、手首に冷感スプレーを一吹きしてみる。
あの匂いがして、少し安らいだ気になるのは疲れているからだろうか。
今日は少しスケジュールを前倒しして仕事を片付けた。
明日は少し余裕がある筈だ。
ならばこんな状態を繰り返したりはしないだろう。

「馬鹿な事を。」

決して好ましくはない香りがまだ漂っている。